山陰・諏訪・都心。全てが伊那谷への課題

色づく秋の駒ヶ根です。

最近、島根県と鳥取県が合併するのでは?という噂話をご存じですか?
島根県の人口63万人・鳥取県は52万人と、県でありながら、もはや「市」の人口レベルにまで減少していることが根拠のようです。
世論の反応を探る観測気球の段階なのでしょうけども、もう一歩先の「道州制」への布石も含まれているのかもしれません。

先日、諏訪の新聞記事を目にしました。
それは、26年前の”平成の大合併”を受け入れなかった諏訪の全6市町村に対する「あの時の判断は正しかったのだろうか?」とする報道記者の問いかけと、マイナス成長を始めた諏訪の現状をレポートしたものでした。

諏訪湖を中心とした6市町村は、伊那市・駒ヶ根市を含む上伊那広域人口の2.5倍。東京へは1時間以上も近く、駅に入ってくる特急は「新宿もしくは東京行き」。グローバル企業が本社を置き、製造業の歴史は古く盛ん。レジャー観光も有名ブランドであり、経済規模は伊那谷と比べようもありません。
そんな裕福に見える諏訪でさえも、近年は高齢化と過疎化が深刻で、あの「御柱祭り」の継承にさえ支障をきたし始めているというのです。


さらに東京都心に目を転じれば、地方との格差はもはや絶望的です。
何かと話題の再開発事業「麻布台ヒルズ」。この再開発で建設されるマンションA棟B棟の総数は1,400戸であり、入居者人口を総務省方式で計算すると約4,200人です。
一か所のマンションで4,200人の人口とは、長野県最南端の5つの村々を合わせた人口よりも多いのです。この現実は、市町村の区割り行政の歪みを映し出しています(平谷村、根羽村、売木村、天龍村、泰阜村=5村で3,850人)。

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「市町村をまとめなかなければ、将来の人口減少と少子高齢化に行財政が耐えらえない…」
危機感を抱いた26年前の政府の政策に誤りはなかったと思います。
3,232もあった市町村は約半分の1,727にまでまとまった一方で、長野県では合併が進みませんでした。

「合併していたら良くなっていたのか?」

合併していようとしていまいと、そもそも人口減少が進んでいる以上、今の地域社会と変わりはなかったでしょう。
しかし、そもそも議論のポイントが「私たちが死んだ後の事を考えて於いてあげましょう」という歴史的なテーマだったという事に、26年前の我々は気付けなかった。

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遥か遠い山陰地方の噂話と、お隣の諏訪の新聞記事、そして都会のマンション話は、あちらこちらの無縁な話題のようでありながら、「ねえ、これから伊那谷はどうするの?」と、私たちに突き付けられた課題であることに気付きます。

古代から2,200年間続く「イナ」の歴史は、上伊那・下伊那の隔たりなく、同じ地形に暮らす「イナ」と呼ばれる一つの土地でした。
「イナ」の語源となったのは天孫族の神・阿智の「八意思兼神」がその由来であり、今もってこの神様は上伊那・下伊那共通の土地神様です。
「知恵の神様」と呼ばれた神様が治める伊那谷の人々ですから、知恵を絞った未来の伊那谷像を導き出せるでしょう。
我々の子孫が希望を持てる伊那谷になりますようにと、想いが募る晩秋です。

(伊那谷空撮/この狭い谷に、22もの市町村が混在する)