中央アルプス「檜尾小屋」(ひのきおごや)

紅葉の登山シーズンを迎える駒ヶ根です。
中央アルプス檜尾岳(標高2,728m)から300mほど伊那谷側に、「檜尾小屋」があります。1950年代~2021年(令和3年)までの長期に渡り、10名ほどを収容できる無人の「避難小屋」でしたが、今シーズンからは有人化された「山小屋」として新たな歴史がスタートしました。

元々は、遭難事故で亡くなった登山者の父親が「二度とこのような事故が起こらない様に」との願いから、自費で避難小屋を建てられたのが始まりと聞きます。
最初は石積みの室小屋だったそうですが、木造トタン葺の小屋になってからも、あくまでも小さな避難小屋のままでした。

駒ヶ根市では、この小屋をトップシーズンの7月~10月だけは有人の山小屋として運用できるようにしたいとの改修計画を立てました。
一つ目の理由として、中央アルプスが抱える安全性の課題克服が挙げられるでしょう。
中央アルプスの縦走は多くの登山者の憧れのひとつでもありますが、最も深刻な問題として、長い縦走距離にもかかわらず有人の山小屋がアンバランスな配置であると言われます。ひとたび避難に迫られた時でも、この檜尾岳の避難小屋のみで、且つテント場さえ無いという状況の危険性を指摘されていました。

2013年には檜尾岳付近で、韓国人パーティー4人が亡くなった遭難事故が発生します。登山知識に乏しい軽装での入山だったそうですが、中央アルプスはアップダウンの激しさやガレ場の多さと藪漕ぎの多さ、加えてコースがわかりにくいという難所でもあります。
きっとロープウェイの存在が観光色を強くし、険しい山岳イメージが薄らいでいるのかもしれません。
今後の檜尾小屋の有人化が果たす役割は大きいはずです。

二つ目の理由は、中央アルプスの「国定公園」化でしょう。以前にも触れましたが、中央アルプスは「国立公園」ではなく「国定公園」ですので、管理する市町村の自由度が与えれています。
駒ヶ根市はこのルールを上手に活用したのではないでしょうか。リニア開通を念頭において、中央アルプスを有する駒ヶ根市にとっては、観光資源の魅力向上にもつながる施策となったはずです。
簡素な避難小屋を増築して収容人数40人に拡げ、同時にテント場も周囲に整備しました。他の営業小屋に比べれば食事などの提供もありませんので見劣りはします。それでも登山者にとっては「時間に追われる縦走」から解放され、安全と安心を得られることができました。

改修費用に関する話も付け加える必要があるでしょう。
8,550万円の改修費用を見込んだ駒ヶ根市は、一部の300万円をクラウドファンディングに委ねてみたのです。更には、プロジェクトをより多くの山岳愛好家に知ってもらうために、登山アプリ「YAMAP」を運営する株式会社ヤマップとコラボするなどした結果、目標を大幅に超える寄付金額764万4千円を募ることができたのです。
山を愛する人たちと共に改修を終えた「檜尾小屋」の更なる発展を期待します。

予約・お問い合わせ【檜尾小屋】
https://www.hinokio-chuoalps.com/
電話 090-7957-7650