南割公園のハッチョウトンボ

夢中でカメラのシャッターを切る私に、背後から訪れた年配のご婦人が声をかけます。「トンボは何処にいるのでしょうか…?」
それもそのはずで、日本のトンボの中で最も小さく、全長が1円玉にスッポリと収まってしまう超小型のハッチョウトンボは、初めて訪れた人にとっては、慣れるまでは目に入らないものなのです。
「ここにいますよ。ほら、いっぱい…。」
どなたも「赤とんぼ」が大きさの基準なものですから、初めて見つけた時には本当に驚きます。

この際、「赤とんぼ」の正式名を調べてみようと思い付きましたが、
「トンボ科」の、「アカネ属」…まではわかりましたが、「アカネ属」にはさらに10何種類にも及ぶトンボがいることを知りました。子供の頃に田んぼの上空を覆っていた赤とんぼ達は、実は10何種類もが混在していたという2重の驚きです。

子供とは随分と残酷な生き物なわけで、赤トンボを捕まえては尻尾をちぎってはみたり、羽をむしってはみたりと、さすがに「閻魔様」もあの世に行くゲートの前では、そのことを一旦指摘してくるだろうなと、今から怯えています。
しかし、ハッチョウトンボにはそんな残酷行為は厳禁。なぜなら、駒ヶ根市の「市の昆虫」に指定されているからです。それほどまでに、全国各地で絶滅危惧種に指定されている大切な生物なのです。

漢字で書くと「八丁蜻蛉」。由来となる八丁とは何ぞや?ですが、「八丁目付近でのみ見られる蜻蛉(トンボ)である」という、昔の偉い学者先生の検分からそう名付けられたものだと伺います。
その八丁目とは、名古屋市のどこかの八丁目らしいのですが、それほどまでに当時から既に貴重な存在だったということでしょう。

南割の地に棲みついた小さなトンボは「ハッチョウトンボを育む会」のメンバーに大切に守られ、市営野球場の建設とともに公園整備された一角に安住の棲み処を与えらえ、2004年7月「駒ヶ根市の昆虫指定」を受けて駒ヶ根市教育委員会の保護下に置かれることとなりました。
8月上旬までの短い期間ですが、精いっぱいに生きる様子をご覧になってみませんか?