鮎の友釣り

オリンピック、感動の連続でしたね!スポーツの力は偉大です。
さて伊那谷の風物詩、天竜川の「鮎の友釣り」が最盛期を迎えます。

昔から「友釣り」は大人に許された釣りと言えるでしょう。最大の理由は、「おとり鮎」を買わなければ釣りがスタートしないところにあります。買った「おとり鮎」に針をぶら下げて泳がせ、「コラ!俺の縄張りから出て行け!」と体当たりしてきた野鮎が針に引っ掛かったところを釣り上げる手法だからです。

「おとり鮎」の現状価格は一匹600円ほどで、通常2~3匹を購入しますが、今では上伊那郡内の「おとり店」は3店(辰野町・伊那市・中川村)しかないようです。昔は井戸が多かったせいでしょうか、[おとり鮎]と書かれた看板を数多く見かけた気がします。とは言っても、当時の子供にとっては、最初からお金がかかる釣りなどは出来るはずがありません。

そんな夏の土曜日、一人の同級生が「学校が終わった午後、一人で鮎の友釣りに行く」と言います。常に先を行く子供でしたが、まさかの大人宣言に一同は怯みます。「親アユ(オトリ鮎)はどうするのよ!」負けじと一人が食って掛りましたが、予想だにしないプランが返ってきたのです。
「テンカラ(毛針釣り)で、まずアカウオ(ウグイの伊那谷呼称)を釣ってから、それをオトリに使う」。
「ォ、オゥー…。」ダイナミックな発想に一同は驚きますが、子供たちの小さな脳内には大きな疑念がかけ巡っています。「…そんなの、ダメに決まっとるじゃねーかー!」気に食わないとばかりに言葉をぶつける者でも、ダメな理由を説明できるほどの知識はありませんでした。

さて、ウグイで鮎は釣れるのか? ウグイは「おとり鮎」の代替にはならないのです。食性が違う、生きる環境が違う、性格も異なるウグイを、鮎の縄張りへとコントロールするのは無理だと言われます。
子供らしい発想でしたが、思うままにチャレンジしてみた事が彼にとっては有意義でした。
当然ながら釣果の知らせは無く、子供なりの気遣いだったのか、周囲の誰かが尋ねることもないままに、その夏は昭和の伊那谷へと消えていきました。

鮎釣りの詳細は…【上伊那郡・天竜川漁業協同組合】
http://www1.inacatv.ne.jp/~tenryugawa-gyokyo/index.html