「ライチョウ復活作戦」その後

「北アルプスから中央アルプスに、冒険心溢れる雌ライチョウがやってきた!」これは以前の当ブログで紹介しました。
このライチョウの行動は環境省を動かし、中央アルプスで絶滅した「ライチョウの復活作戦」が始まったと記事を結んでいます。

さあ、その後はどうなったのでしょうか?
2019年からの繁殖作戦は確実に成果を上げており、既に中央アルプスでは数家族が生息しています。本年8月4日にはさらにその中から選抜された2家族が、2つの動物園にそれぞれ保護されたとの報道もありました。
一家族(4羽)は長野市の茶臼山動物園へ、もう一家族(6羽)は栃木県那須町の那須どうぶつ王国へとそれぞれ保護されたのです。
この目的は、動物園で雌を交換しながら更に繁殖させ、数羽を来年中に野生復帰させるという作戦の一環です。動物園への移送はヘリコプターといったVIP待遇を受け、流石に環境省の直轄事業といったところ。手厚くしてもらっています。
このニュースは那須動物園がある栃木県でも取り上げられており、佐藤園長のコメントからもピリッとした緊張感が伝わってきます。ー「同園の飼育員と獣医師計6人が24時間体制で飼育する。これからが正念場…動物園として培ってきたものを野生動物の保全につなげていきたい」―

さかのぼること2020年7月には、中央アルプスには10家族までの繁殖が確認されていました。そのうちの5家族をケージの中で保護してきましたが、更にその中から、今回の2家族が動物園行きに選ばれたというわけです。
動物園には行かなかった家族3組は既に放鳥されていますので、現在の中央アルプスでの生息数は不確定のためか公表されてはいませんが、8家族・40数羽程度がひっそりと暮らしているのではないでしょうか。山での自然繁殖に加えて、今回の動物園の繁殖組も加えた生息数の最終目標は80羽程度だそうで、これが作戦の全容です。

厳しい環境下に生きる野生のライチョウは、営巣がままならないままに6~8個を産卵してしまい、その中から孵化出来る割合は4~5個。雛になっても生存率は30%程度らしいですから、結局1羽しか生き残れないのです。平均寿命も4年程度であれば、やはり「絶滅危惧種」であり続けることに変わりはないでしょう。
どうか2度までも、中央アルプス一帯からライチョウが滅びてしまうことが起こりませんように…祈るばかりです。

環境省信越自然環境事務所
http://chubu.env.go.jp/shinetsu/index.html