どうか安全な登山を。いってらっしゃい!

登山シーズンの長野県、山の事故も多く発生しています。
さっきまでピンピンしていた人が、いとも簡単に死ぬ…それが山の怖さです。でも防げる事故も圧倒的に多いハズ。運命を分けてしまうその「一瞬」に出会わないように安全な登山をしていただきたいと思います。

北・中央・南の3つのアルプスと八ヶ岳、そして御岳山・浅間山を有する長野県。今年の1月1日~9月27日までに、長野県内の山岳事故による死者・行方不明者は合わせて37名にも上ります。ほぼ1週間に1名の割合で誰かが亡くなるか行方不明。遭難事故はどこかでほぼ毎日発生しているのが長野県の実情です。
毎日のように県警山岳救助隊は出動をし、休む日もなく救助ヘリは飛び立ち、医療に尽くす人も多く関係します。更には善意の手助けを行う山岳協会や見知らぬ登山者、山小屋の人。登山はそうした人間の支え合いで成り立っています。

さて、山岳事故の約半数(48%)が転倒や滑落によるとのデータがあります。事故に遭われた方でも、実は「登山には慣れた人だった」というケースが大変多いのではないかと考えていますが、いかがでしょう?
行動のスケジュール管理も、ルートの状況も、天気予報も十分に心得ているにもかかわらず、じゃあなぜ事故は起こるのか?
私ごとですが、先日の雨上がりに歩道のマンホールで滑って転んでしまいました。「恥ずかしかったけど、ケガしなくて良かった」というだけの食卓の話題が、ではこれが山だったとしたらどうでしょう?取り返しのつかない事態に直結していて、二度と同じ食卓には付けなくなっていたかもしれません。山での事故は、こうした些細な「一瞬」が生死を分けているだけではないでしょうか。

山には慣れているとは言え、早朝から荷物を背負って足元の悪い場所を行くわけです。どんな人でもバランスを崩すことはあるでしょうし、注意力が散漫になる時間帯もあります。山に行きたいばっかりに仕事を無理してきたとすれば疲労が溜っているかもしれません。標高2,000mを超えると気圧も下がり体調にも変化が現れます。
そうした中で突然、ガスが周囲を覆い視覚や方向感覚を失う、急に寒くなる、浮石を踏む、濡れた岩で靴を滑らす、思いがけずつまずく…。
その時の「一瞬」…は突然です。
登山ルートは多くの人の手によって、可能な限り安全が保たれるように努力されています。しかし登山経験を持つ人であろうとなかろうと、わずかな一瞬はいつ、誰に容赦なく訪れるか知れません。
登山の最終目的地はご自宅です。どうか安全に。いってらっしゃい!
                                画像場所/中央アルプス千畳敷カール