ダボス会議と伊那谷の昆虫食

毎年行われるダボス会議とは、「賢人会議」とも呼ばれているそうで、外務省も参加させてもらうほどの権威の高さなのだそうです。
さて、今年の会議において賢人が申されるには、「世界の10億人が『肉食』をやめて『昆虫食』にすれば、それが『カーボンフリー』な世界を実現し、気候変動を抑えられる」との仰せであります。
さらには、「何よりも昆虫からは、良質なたんぱく質が摂取できるのだから」とも仰せであります。
ちなみにですが、この世界的に有名なスイスの山岳リゾート地で行われる会議は、ケーブルカーが直接乗り入れるホテルが会場で、賢人の方々のディナーは、ステーキやサーモンをお召し上がりになられたということでございます。

信じがたいでしょうが、日本国内へ目を向ければ、賢人たちの影響力は既に現実となって表れています。
四国地方の高校では、コオロギの粉末を練り込んだコロッケが給食で提供されたとか、NTT東日本は、各地にある支店の空き部屋を利用してコオロギ飼育に乗り出すだとか、日本航空の子会社がコオロギの粉末入りハンバーガーを機内食で出すのだとか、既にコオロギせんべいが無印良品の店頭に並んでいるとか、Pascoがコオロギパンの販売を開始したとか…これはSDGsとやらを邁進する企業様にとっては止められない事業のようです。読売新聞も「国内でも昆虫食への関心は広がっている」と、お書きになられていることから、世論作りも着々と進行中です。

今回のブログの本題はここからです。
「昆虫食などと馬鹿を言うな!」と声を発する時、巧みに引き合いに出されて利用されるのが、私たちの暮らす伊那谷だというお話です。
つまり、『…長野県の伊那谷の地方では、昔から昆虫食が盛んで、色んな昆虫を食べてきましたから、それほど怖がる事ではありません。』という論調に利用されるやり方です。今後はこの様な「伊那谷では、昔から昆虫食べてます」論を、様々な人から耳にするでしょう。

さてここで、ハッキリと申さなければなりませんが、伊那谷の昆虫食は「食文化」であり、そのご意見とは決定的に異なります。
食糧不足、CO2削減や気候変動の抑制のために「庶民はコオロギ食っとけ」論と、伊那谷の食文化をひとくくりにされる言われはありません。

我々はそこらにいる虫をやたらに捕まえて食べてきたわけではなく、食材は季節ごとに自然から授かった厳選された命でした。それは保存食でもあり、豊富なタンパク源だとわかっていた知恵でもあり、年に一度だけ授かる貴重な天の恵みとして食べていたことまでをご理解されていますでしょうか?
むしろスペシャルな食材として珍重してきたのが伊那谷の昆虫食文化です。
ざざ虫・蜂の子・イナゴ・蚕のさなぎ。確かにそれらは昆虫ではあるものの、食材として「畏敬の念と感謝の気持ち」を持ち合わせているのが伊那谷の人々であり、この食文化を恥じる事も無ければ、否定するつもりもありません。
コオロギを召し上がりたい方はご自由にされればよろしいのですが、崇高な伊那谷の食文化を、コオロギ論争に巻き込まないでほしいと願います。
蜂の子の佃煮(画像/あけびさん)