松本空港と駒ヶ根の新婚さん

田植えが終わった駒ヶ根です。
「6月に結婚した花嫁は幸せになれる」日本でも通用する話かどうかは別として、農作業が一段落した6月の結婚式は、地方にとっては都合が良いのも事実です。
コロナ明けですから、新婚旅行も海外渡航が復活することでしょう。
ところが、駒ヶ根の新婚さんにとって、それはそれは大変な長旅が待ち受けているといったお話です。

長野県には『松本空港』があるだろう?
そうおっしゃいますが、交通手段としては利用しにくいのが実情です。
一般的には、地方空港はハブ空港(羽田・伊丹など)と結ばれているので、県内の空港へ行けば、国内線~国際線の乗り継ぎで海外へ出られます。成田出発だとしても、羽田からは電車で90分。海外旅行ともなればそれも楽しい時間です。

さて松本空港ですが、駒ヶ根からは高速道路で50分。数日間の駐車料金も無料です。ならば、松本空港から海外へGO!楽ちんだね!って…残念ながらそうはいかないのです。羽田との空路は無く、「近すぎるのか?…じゃあ伊丹?」ってそれもありません。
定期便は札幌・福岡・神戸線に一日一往復ずつ。お察しの通り、主たる利用目的は観光用にとどまり、移動の為の交通手段としては利用しにくい理由がここにあるのです。
海外ツアーの出発地は羽田・成田・関空のいずれか。出発便も決まっていて、更に重いスーツケースもありますから、結局のところ駒ヶ根の新婚さんは、成田空港までクルマで行く手段に限られるのです。

Googleマップでは駒ヶ根=成田間は4.5時間。しかし、休憩時間や東京近郊の渋滞も考慮すると、実際は片道6.5時間を運転する地獄の長旅です。いっそのこと、飛行機を乗り継げる九州・四国・山陰の新婚さんの方が、はるかに楽な新婚旅行でしょう。

確かに、残念ながら、松本空港は県民の翼にはなっていません。しかも、毎年5億円の経常赤字を生み続ける空港であり、県からの一般財源が主な収入源です。旅客機の発着による航空事業の収益はわずかであるという空港なのです。

しかし、県民の翼ではなくても、松本空港の存在意義とは「県民の命を空から守る」事であることに揺るぎはなく、山岳救助ヘリやドクターヘリの重要な基地であり、何よりもNAGANOの空の玄関口が常に開いている意義は大きいのです。
かつての長野オリンピック時、各国の選手団は陸路と長野新幹線でやって来ましたが、ヒコーキ大国アメリカ代表団は関空に到着後、チャーター機に乗り換えて松本空港に降り立ちました。あれは松本空港が最も存在価値を発揮したハイライトシーンです。

山脈に囲まれた松本空港は日本で唯一、着陸誘導装置が使えない空港のため、パイロットたちは目視と飛行技術だけで着陸しています。この事も、定期便を多く運用させられない理由の一つかもしれません。
空港拡張とジェット旅客機の就航から30年。次の30年に向けて展望が明るい空港かと言えば、残念ながらそうは思いません。
ならば、リニア中央新幹線がそれを補う役割を果たすのでしょうか?
少なくとも、駒ヶ根の新婚さんにとっては、リニア開通によって海外が急速に近くなることは間違いなさそうです。

松本空港から離陸するFDA(フジドリームエアラインズ)