山岳救助の有料化を考える

10月7日、中央アルプス山頂付近は霧氷で覆われたとのニュース。急速に冬山へと向かいながら登山シーズンは間もなく終わりを迎えます。
10月10日までの長野県内の山岳遭難は245件発生。死者29人は昨年を上回っています。

さて9月14日、中央アルプス木曽駒ケ岳の山頂付近(標高約2,900m)での救助活動です。神奈川県の無職の男性(67)が「疲労のため動けなくなった」と、本人が救助を求めました。長野県警山岳遭難救助隊などが出動し、男性を背負って下山。病院に搬送しましたが、けがもなく無事だったという救助活動です。警察は、「自分の技術や体力に見合った登山をするように!」と注意を呼びかけたというものです。

もう一つは北アルプスでの出来事。9月17日の午後3時半ごろ、前穂高岳の標高2,900メートル付近で「小学1年の男子児童6歳」が動けなくなったと、同行する保護者から救助要請がありました。長野県警山岳遭難救助隊が出動して、午後7時過ぎに近くの山小屋まで連れ帰ったという活動です。

登山ブームは収まることを知りません。
TV番組やYouTube動画でも、画面が映し出す山岳風景は美しく、解き放たれた別世界に多くの人が憧れます。一方で、「山をなめてはいけない」…麓に暮らす我々は誰もがそれを知っています。ましてや6歳児の北アルプス登頂が無謀だとも、誰もがわかります。無謀な登山には死が待ち受けることを誰もが知っています。

前述の遭難者たちは、救助費用に対していくらを支払っているのでしょうか?
答えは「無料」。たとえ救助ヘリが出動したとしてもタダだったはずです。今後も、「疲れちゃった…」という理由による救助が増加するならば、その救助費用は請求されるべきではないか?と一般的な感情が湧きます。

埼玉県では、2018年に「山岳エリアで、救助のために防災ヘリが出動した場合は有料とする」条例が施行されました。料金は5分ごとに5000円。過去の平均救助時間は1時間程度とのことなので、その費用は約6万円かかります。
埼玉県以外で、救助費用の有料化を行う自治体はありませんが、長野県と山岳を共有する隣県は、協議を進める必要があるかもしれません。タクシー代わりの救助要請が、容易く許される日本の登山文化であってはなりません。

初冠雪時の中央アルプス・千畳敷カール