アクアで我慢する若者~新年度の始まり~

とある工場の応接室は使用中だったので、食堂に通されました。
食堂では、遅い昼食を取る社員同士の会話が聞こえます。
「クルマ替えたの?」
「…ええ。」
二十歳そこそこの若者がクルマを購入したことに、年上の同僚が食いつきますが、若者にとっては乗りの悪い話題のようです。
「狭くない?プリウスの方が良かったじゃん!」
なんと若いのに、小型ハイブリッド車「アクア」を買ったようです。
「…フェアレディZじゃねーのかよっ!」私は心の中でツッコミを入れています。昭和ならば「スカイライン」や「Z」、「セリカ」といった車種が、この年齢の定番だったからです。

若者のクルマ離れはここまで深刻なのか!そう感じました。
彼にとってのクルマは、通勤道具でしかなければそれまでの事です。
わずかな給料と、将来が見出せない社会生活では、燃費の良いクルマこそが最優先なことも理解できます。SUVでもなくてもスノボーへは行けますし、高性能なスポーツカーである必要もありません。でも若者には、若者らしいクルマ選びがあるはずだと思うのです。そして何よりも心に引っかかったのは、受け答えの面倒くささに混じった「寂しさ」があったことです。

ふとっ、後日になってからある想いが脳裏を横切ります。
「彼だって本心は、フェアレディZやSUVが欲しかったのではないか?」
それなのに、『欲望を押し殺して生きる術』が身に付いてしまって、そんな育ち方をしてきてしまったのではないだろうか?…と。

考えても見れば、今の二十代は、生まれた時からずっと不景気な日本で育ちました。どの家庭も、苦しい経済状況の中で、やっとの思いで子育をしてきたはずです。どうにか大学までは卒業しても、就職後に自身の借り入れ奨学金の返済で四苦八苦している30代独身が五万といます。

若者が「夢や希望」を持てないままの社会で良い訳がありません。欲望を押し殺し、明日をも知れない人生を若者に強いる社会ではいけません。さあ、新年度の始まりです。若者が希望の持てる社会に向かいますように。

駒ヶ根市中沢「穴山の桜」